和文化教育学会 < 「鯉のぼり」活動協力のお願い
平成23(2011)年3月11日に発生した東日本大震災は、日本社会における未曽有の危機状況を生み出すと共に、私たちに自己の生き方、社会のあり方、国家の役割、世界との関係を覚醒させた歴史的事件だと言えます。平成17(2005)年4月から「和文化の風を学校に」の願いをもって活動しています和文化教育学会としましては、このような日本社会の危機状況において和文化がどのような役割を有し、意義があるかを問うことが課題であると考えます。
この課題に対する試みとして、私どもの協会は伝統文化の行事として5月5日の「こどもの日」前後に掲揚される「鯉のぼり」を各地域の学校園等において東日本の地域復興と子供たちの活力創生を祈念して掲揚する企画に取り組んでいます。「鯉のぼり」は、鯉が黄河の竜門の滝をさかのぼり、さらには天空まで舞い上がって龍に変身したという中国の伝説(後漢書)を受け、日本では、人生の逆流に耐え、困難を乗り越えて夢を実現する勇気の象徴とされています。その意味では、「鯉のぼり」は、この度の東日本大震災による悲惨な現実に対して立ち向かう人々の生き方とこれからの地域社会の復興と創造に活力を生み出す活動であると言えます。この企画の魁として広島県東広島市では市内の幼小中52校園が「鯉のぼり」を掲揚するために、絵手紙、切り絵、水墨画、邦楽演奏などの和文化学習を展開しています。また、フランス在住の服部祐子さん(パリ日仏文化センター「エスパスハットリ」館長)が「日本の子どもの日」から「世界の子どもの日」として世界の子どもたちの健やかな成長と世界の平和を祈願され、2001年よりフランス国内にて実施されてきた「KOINOBORI」の活動とも連携を図り、フランスからの「鯉のぼり」も掲揚する企画に着手しています。
このような「鯉のぼり」活動は、これまでにも諸団体および諸地域において数多くなされてきています。阪神・淡路大震災の時には「復興鯉のぼり」として「神戸復興へ 鯉の谷わたし。明日に向かって挫けずに元気に泳げ 鯉のぼり!」の標語と共に神戸市内の避難所に掲げられました。現在でも宮城県石巻市立青葉中学校のグランドに神戸から送られた手作り「鯉のぼり」が掲揚されています。岩手県陸前高田市立の第一中学校でも「がんばれ岩手」と書かれた「鯉のぼり」が掲げられています。岡山県和気町「徳永こいのぼり」は、宮城・福島・岩手の3県に応援メッセージを記載した鯉のぼりを贈られたとのことです。埼玉県加須市に避難されている福島県双葉町の人々は、加須の「鯉のぼり」を避難所に掲揚しています。兵庫教育大学が立地する兵庫県加東市では特産の「鯉のぼり」に激励メッセージを記載して作業用トラックと一緒に宮城県に寄贈しています。さらに、市内の小中学校は「復興応援こいのぼり」を作成し、「鯉のぼり」活動を推進しています。
「鯉のぼり」のイベントは、東京タワーを含めて北海道洞爺湖町、秋田県由利本庄市、群馬県館林市、栃木県宇都宮市、茨城県常陸太田市、埼玉県加須市、千葉県市川市、静岡県熱海市、静岡県裾野市、石川県金沢市、石川県珠洲市、岐阜県垂井町、福井県勝山市、岡山県赤磐市、広島県呉市、広島県廿日市市、徳島県三好市、徳島県阿南市、高知県いの町、高知県四万十町、熊本県小国町、沖縄県糸満市など全国各地で実施されています。東北地方でも岩手県北上市、岩手県雫石町、宮城県登米市、宮城県白石市、福島県白河市、福島県伊達市などにて行われていました。
これらの「鯉のぼり」の活動は、主に各地の伝統行事や観光行事として実施され、災害時には復興の願いを込めて行われてきました。しかし、これらは活動目的の共有化を図れないままに個別に実施されているので、国内の「鯉のぼり」活動が連携して危機状況における文化的価値の構築、これからの社会を担う世界の子どもたちの健やかな成長、世界平和を希求する取り組みに発展し難いところがありました。私どもの協会は、「鯉のぼり」活動の文化的価値を世界的視野も考慮して発信し、「KOINOBORI(世界の子どもの日)」の実現を意図する文化創造の活動として継続的に取り組むことを考えています。
このような「鯉のぼり」活動の目的を踏まえて、この度の東日本大震災によって地域社会が消滅したと言える危機的状況に対して、地域全体が人々の絆を強め、地域社会の再建を図り、新たな地域文化の創造を行う必要があります。そして、これからの地域社会の創造とその役割を担う子どもたちの活力創生を祈念して、国内外の多くの学校園等で天空へ向けて舞い上げよう「鯉のぼり」活動を推進している次第です。
私どもの協会活動の趣旨にご賛同下さり、「鯉のぼり」活動にご協力下さいますようお願いを申し上げます。なお、ご協力をいただける学校園等におかれましては、下記の対応をよろしくお願いを申し上げます。
記
私どもの協会は、今年度の第7回和文化教育全国大会を岩手県平泉町にて開催することになっていましたが、この度の東日本大震災にて中止になりました。協会代表者が5月4日~6日まで岩手県大会実行員委員会の関係者の協力を得て、盛岡市と一関市を基点に被災地を訪問します。なお、義援金と支援物資等の送付は協会としては受け取れませんので、ご遠慮して下さい。本年度の「鯉のぼり」活動内容につきましては、平成23年11月2日~3日に東広島市にて開催する第7回和文化教育全国大会と平成24年1月7日~8日に関西学院大学教育学部にて開催する第8回和文化教育全国大会において発表いたします。
事務局
〒673-1494 | 兵庫県加東市下久米942-1 兵庫教育大学 關 浩和 |
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連絡先 | TEL&FAX 0795-44-2306 E-Mail: hiroseki@hyogo-u.ac.jp |
Home Page | https://www.rawace.org/ |
服部祐子氏提供
エッフェル塔を背景に泳ぐ鯉のぼり
鯉のぼりを作成する子どもたち
手作り鯉のぼりを掲げる子どもたち
この活動は、本プロジェクトの目的である「伝統行事として5月5日の『こどもの日』前後に掲揚される『鯉のぼり』を各地域の学校園等において東日本の地域復興と子供たちの活力創生を祈念して掲揚すること」を踏まえて被災地にて「鯉のぼり」を掲揚することを意図して実施された。実施する上においてどこの被災地にどのような方法で訪問するのかということが課題であった。訪問地についてはフランスでの服部さんの「鯉のぼり」活動を支援されていた仙台市在住の方が南三陸町の町長佐藤仁氏と面識があり、その方から佐藤町長に趣旨を説明していただき、町として「鯉のぼり」活動を受け入れてくれた。協会の代表者が5月5日の午前7時半に仙台駅前から支援者の車で、三陸自動車道を利用し登米市まで行き、国道398号によって志津川湾に面する中心街に入った。その際に国道の谷あいの道をぬけると眼前には崩壊した町の残骸が広がっていただけであった。特に、町長を始め職員の方々も屋上に避難していた「防災対策庁舎」も津波によって鉄骨のみになっていた。ここでは屋上に逃れていた約30名の内、生存者が町長を含めて8名とのこと。また、2階にて防災無線によって住民の避難を呼び掛けていた危機管理課職員の遠藤美希さんも亡くなったところでもある。庁舎前にて亡くなられた方々への哀悼の献花を行い、加東市からの「鯉のぼり」も掲揚した。
その後、仮庁舎と避難所の「ベイサイドアリーナ」にて佐藤仁町長にフランスと加東市からの「鯉のぼり」を贈呈し、アリーナの掲揚台にて避難者の方々と一緒に「鯉のぼり」を掲揚した。さらに、加東市からの「鯉のぼり」ついては、避難者の子どもたちに配布した。中にはその「鯉のぼり」を短いポールに巻き付けて泳がす子どもも見られた。なお、服部さんからの応援メッセージとフランスでの「鯉のぼり」活動に関する写真は避難所の掲示版に掲示されたとのことである。数日後、担当の職員の方から「悠々と空を泳ぐ鯉のぼりは子供達にも大変人気で、いまだに掲揚させて頂いております」のメールを受け取った。その意味では、「鯉のぼり」活動は悲惨な現実に対して立ち向かう人々の生き方とこれからの地域社会の復興と創造に活力を生み出す上で重要な役割を果たしたと言える。
5月6日には協会の代表が石巻市を訪問し、特にこの度の大震災においてもっとも悲惨な被害を被った大川小学校を弔問した。ここでは全校児童108人の内、約7割の子どもたちが死亡(56名)し、行方不明(18名)になった。また、教職員の方々も約9割(10名)の方々が死亡され、行方不明になっている。今後、緊急時における学校の対応が検討され、このような悲劇が生じない対応がなされると願うが、学校の場にて尊い子どもたちと教職員の方々が命を失う事実は、学校教育に関係する教員にとっては悲しみの涙が岩を貫くほどの思いを抱く被害である。大川小学校を訪問した時には、多くの献花がなされ、「鯉のぼり」も掲揚されていた。お子さんかお孫さんを亡くされた保護者の方が前日の子どもの日に掲揚したものと思われた。学校関係者にとってはこの悲劇の学校のことを肝に命じ、子どもたちと教職員のご冥福を祈る使命があるので、持参した「鯉のぼり」も掲揚した。その際に、「鯉のぼり」は天空に旅立たれた人々への哀悼と共に生存している人々の天空への希望も象徴するものであると確信したとのことである。その意味では、「鯉のぼり」の新たな価値を再認識したと言える。
兵庫教育大学が立地する兵庫県加東市では、明治時代から農閑期の季節作業として「鯉のぼり」を生産し、「播州鯉」と呼ばれて現在も市の特産として作られている。2年前から小学校1年生と中学校1年生に子どもたちの夢を記載する「鯉のぼり」作成を実施している。さらに、市内の遊園地では子どもたちの願いを書いた「鯉のぼり」を1万匹も掲揚するイベントを実施していた。このような「鯉のぼり」活動を踏まえて、加東市では震災後の支援活動として特産の「鯉のぼり」に激励メッセージを記載して作業用トラックと一緒に宮城県の被災地に寄贈する活動を展開していた。さらに、加東市の名水などの支援物資も含めて東北への支援を企画している際に、協会からの「天空へ向けて舞い揚げよう『鯉のぼり』活動」を知り、「鯉のぼり」の活動を協会の活動と連携することになった。その連携活動として4月18日から市内の幼(2園)小(9校)中(3校)高(1校)大(1校)の学校園において約1000匹の「復興応援こいのぼり」(約70センチ)を作成した。全学校園にて「一丸となって応援します」「立ち上がろう日本」「皆の絵顔を待っています」「はじめの一歩希望」などのメッセージが書かれた「鯉のぼり」は、5匹(青、赤、黄、黒、白)ごとにセットにされ、宮城県仙台市の東北自動車道泉パーキングに設けられたボランティア・インフォメーションセンターを基点に各地の避難所に配布された。また、協会として訪問した南三陸町と石巻市立大川小学校での「鯉のぼり」掲揚に活用された。その意味では、地域の特産品である「鯉のぼり」が被災地での人々と他地域の人々との絆を結ぶ役割を果したと言える。
東広島市と島田市では、地域の学校教育の基盤に和文化教育を重視し、市内の全幼小中において一校一和文化教育を推進している。両市は今回の「鯉のぼり」活動の実施において全国に先駆けてこの活動を実施した。東広島市では、教育委員会が「こいのぼりを掲げ、被災地を応援!」の活動を市内の全学校園(幼2、小37、中14)に次の要領で呼び掛けた。「1目的 市内全幼稚園・小中学校で、期間中、こいのぼりを掲げることを通して、被災された人々へのがんばりを応援し、1日にも早い復興へのメッセージを送る。2 実施期間 平成23年4月25日(月曜日)~5月2日(月曜日) 3 実施方法 園児・児童生徒に、この取組みの趣旨の理解を図り、期間中、掲揚台等に毎日こいのぼりを揚げる。【実施事例】(1)児童・生徒鳥海で、こいのぼりを揚げて、被災地を応援する趣旨を話す。(2)こいのぼりと一緒に揚げる応援メッセージを考える。(3)こいのぼりを期間中、掲揚台に揚げる。その時、応援メッセージも一緒に揚げる。(4)HPを使って、取組みを発進する。」このような呼び掛けに応じて、各学校園では義援金の募金活動、「鯉のぼり」の作成と掲揚、応援メッセージづくりなど様々な活動が実施された。例えば、造賀小学校では全生徒が応援メッセージを記入したうろこを貼り付けた1.5メートルほどの「鯉のぼり」を制作し、学校にて掲揚した。また、各学年で「がんばろう日本」の文字をちぎった広告紙によって作り、校舎に掲示したのである。
島田市においても教育委員会からの呼び掛けに対応して、全学校園(幼1、小19、中7))にて「鯉のぼり」活動に取り組んだ。さらに、学校園ばかりでなく家庭や地域の方々にも呼び掛けたので、児童の家庭や茶畑での「鯉のぼり」活動に発展した。例えば、島田第五小学校では避難訓練の活動とも連携させ、被災地の学校への応援メッセージ作成を呼び掛けた。そして、メッセージを記入したうろこを縫い付けた「鯉のぼり」を掲揚すると共に、石巻市の小学校へ児童が書いた手紙を添付して送付した。このような活動を通して被災地の小学校の児童たちとのこころの交流を生み出している。
両市の活動は、地域全体で鯉のぼり活動を展開し、学校と地域、さらに被災地との交流まで推進している。その意味では、「鯉のぼり」活動は学校単独ではなく地域の学校全体、さらに学校と地域の連携を生み出す教育力を有していると言える。
鯉のぼりの起源が中国の伝説(後漢書)に由来するので、協会としてこれまでにも伝統文化教育や教科書に関する研究交流をしていた華東師範大学の沈曉敏先生と人民教育出版社の郭文霞研究員に「天空へ向けて舞い揚げよう『鯉のぼり』活動」の呼び掛け文を送付した。両氏とも「鯉のぼり」活動の趣旨に賛同され、沈曉敏先生は呼び掛け文を中国語に翻訳し、上海市内の学校に協力依頼をされた。郭文霞研究員は、人民教育出版社のウェブページに活動概要を紹介した。両氏の働きかけによって、鯉のぼり活動の協力を得られた学校は、次の5校である。上海市曹光彪小学、上海市青浦瀚文小学、上海市梅隴中心小学、瀋陽市東北育才東関模範小学、北京市育英小学。さらに、上海日本人学校虹橋校からも協力の申し出があった。これらの中で協会の代表者が6月1日に上海市青浦瀚文小学を訪問した。なお、6月1日は中国における子どもの日である「児童節」である。この由来は、1949年11月モスクワで開催された国際民主婦人連合会理事会が6月1日を世界の子どもの日とする提議に応じて、新しく設立された中華人民共和国は、中華民国の4月4日の児童節を廃止し、6月1日を児童節としたとのことである。したがって、多くの学校では共産党の思想理解を図る行事と児童たちの発表活動が実施されている。
青浦瀚文小学ではこの「児童節」の行事の前に、全生徒たち約800名が各学級にて「鯉のぼり」のぺーパークラフトを制作し、校庭の掲示場所に展示した。また、事前に日本から送られたベランダサイズの「鯉のぼり」も掲揚され、多くの子どもたちは興味関心を示した。そして、多くの児童から日本からの「鯉のぼり」に応援メッセージの記載の協力を得られた。さらに、折り紙による「鯉のぼり」づくりを紹介すると児童たちは言うまでもなく、教師の方々も熱心に参加し、その手法を習得していた。その意味では、大震災という社会的背景も関連するが、日本での伝統文化の「鯉のぼり」は学校での諸活動の発展と国際交流の進展を図る教材として有効な役割を有するものとなり、世界に発信できる文化であると言える。
東京都武蔵村山市は東京都における日本の伝統・文化理解推進モデル地域であり、「小中連携して取り組む我が国と郷土を愛する態度を育てる授業づくり」の研究に取り組んでいる。さらに、日本の伝統・文化教育を踏まえて国際理解教育にも力を入れている。このような教育を推進するために教員の海外研修を実施している。今年度の海外研修として、第八小学校の牧一彦校長、第十小学校の榊尚信校長、アジア教育友好協会の長谷川洋理事長がベトナムとラオスの学校を4月27日から5月5日までの期間で訪問した。その際に、協会の呼び掛けに賛同された持田浩志教育長から「復興鯉のぼり」活動も依頼された。ベトナムではチャビン省にある4校を訪問し、「鯉のぼり」の寄せ書き依頼と日本文化の紹介を行った。ラオスでは10校を訪問し、同様に「鯉のぼり」の寄せ書き依頼と日本文化の紹介を行った。これらの学校の中には、武蔵村山市内の学校が協力していたワンコインスクール・プロジェクトによって建設された2つの学校(サラワン郡ポンタン小、サラワン郡チャンヌア小)もある。さらに、ラオガム郡ドンニャイ中学校は、福島県飯舘村の支援によって建設された学校である。これまでの日本の支援による学校建設もあり、これらの学校においては「鯉のぼり」の活動協力だけでなく、義援金も託された。
このようなベトナム・ラオスの学校視察後、両校では東北の被災地である飯舘村への支援活動を実施した。両校とも全校生が、ベトナム・ラオスから持ち帰った「鯉のぼり」への寄せ書きとメッセージカードを作成した。持田教育長を含めた両校の校長3名が飯舘村の草野小、飯樋小、臼石小の3校が仮校舎としている川俣町立川俣中学校を訪問し、飯舘村の子どもたちにベトナム・ラオスと両校からの激励メッセージと「鯉のぼり」を贈呈した。飯舘村の子どもたちは、これらの「鯉のぼり」とメッセージカード等を見たり、読んだりして笑顔があふれたとのことである。このように「鯉のぼり」が武蔵村山市の学校からベトナム・ラオスの学校の青空を泳ぎ、被災地である飯舘村の学校まで泳ぎ切ったのである。その意味では、「鯉のぼり」活動は、国や地域を越えて人々の思いと絆を形成するものであると言える。
この度の東日本大震災による日本社会の危機状況に対して協会が取り組んできた「天空へ向けて舞い揚げよう『鯉のぼり』活動」は、次の2つの目的で実施された。①伝統行事として5月5日の「こどもの日」前後に掲揚される「鯉のぼり」を各地域の学校園等において東日本の地域復興と子供たちの活力創生を祈念して掲揚すること。 ②日本の伝統行事である「鯉のぼり」活動の文化的価値を世界的視野から再評価を行い、「鯉のぼり・世界の子どもの日」の実現を意図する文化創造の活動として継続的に取り組むこと。そして、活動内容を次の5つに区分して紹介してきた。①宮城県南三陸町・石巻市における「鯉のぼり」活動。②兵庫県加東市における学校での「鯉のぼり」活動。③東広島市と島他市における学校での「鯉のぼり」活動。④中国上海市と北京市における学校での「鯉のぼり」活動。⑤ベトナム・ラオスにおける学校での「鯉のぼり」活動。これら今年度の活動は、直接的には目的①の東日本の地域復興と子供たちの活力創生を祈念して掲揚することに収斂されている。そして、各活動において指摘しているように次のことが評価できる。
①宮城県南三陸町・石巻市における「鯉のぼり」活動では、悲惨な現実に対して立ち向かう人々の生き方とこれからの地域社会の復興と創造に活力を生み出す上で重要な役割を果たしたこと、さらに天空に旅立たれた人々への哀悼と共に生存している人々の天空への希望も象徴するものであるという新たな「鯉のぼり」の文化価値を見出したこと。②兵庫県加東市における学校での「鯉のぼり」活動では、地域の特産品である「鯉のぼり」が被災地での人々と他地域の人々との絆を結ぶ役割を担ったこと。③東広島市と島田市における学校での「鯉のぼり」活動では、学校単独ではなく地域の学校全体、さらに学校と地域の連携を図る教育力を発揮したこと。④中国上海市と北京市における学校での「鯉のぼり」活動では、日本での伝統文化の「鯉のぼり」は学校での諸活動の発展と国際交流の進展を図る教材として有効な役割を有するものとなり、世界に発信できる文化になること。⑤ベトナム・ラオスにおける学校での「鯉のぼり」活動では、国や地域を越えて人々の思いと絆を形成するものであること。
これらの文化的価値から協会としての「鯉のぼり」活動は、社会的危機状況の現実に対して立ち向かう人々の生き方とこれからの地域社会の復興と創造に取組む人々の活力を生み出したところに意義がある。このことは、国内外からの「鯉のぼり」活動への被災地における子どもたちの感謝の手紙に伺い知れる。例えば、ベトナム・ラオスと武蔵村山市の学校から「復興祈願鯉のぼり」を受け取った子どもが次の感謝の手紙を書いている。
「お礼の言葉
僕達の飯舘村は豊かな自然があり、美味しい食べ物があり、心優しい人でいっぱいの自慢できる村です。その大好きな村から離れて生活しなければならなくなったこと、友達が次々に転校していることがとても悲しいです。でも、川俣中学校の校舎をお借りして、みんなで勉強をがんばっているところです。 今日は武蔵村山市立第八小学校・第十小学校のみなさんが僕たちのために遠くから応援をしにきてくださいました。
みなさんはラオスの子供達に対し、すばらしい取り組みをされていると聞きました。僕達もラオスの友達のことをいろいろ学習し始めたところです。まだまだ知らないことが多いのですが、みなさんから教えていただきながら、今僕達ができることから進めていきたいと思います。よろしくお願いします。
僕達も今日応援いただいたことを心に刻み、これからもどんな事にも負けないで力いっぱい頑張っていきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。6年 児童」
協会としての活動は、これまでの伝統行事の「鯉のぼり」活動に留まらない世界的な活動視野も視野に入れて今後も継続的に活動を実施していくのである。その意味では、今後、「鯉のぼり」活動は国内における伝統行事や地域イベントとしての意義だけでなく、世界における文化交流と文化創造としての活動を生み出すことも期待できる。
―東北と世界へ羽ばたけ私たちの願い―
この度の「鯉のぼり」活動は、東日本大震災をきっかけに復興支援として開始されました。その理由は、「鯉のぼり」活動が社会の危機状況に直面している人々の心を高揚し、人々の絆を強める文化価値を有するからです。「鯉のぼり」の鯉は黄河の竜門の滝をさかのぼり、さらには天空まで舞い上がって龍に変身したという中国の伝説(後漢書)を受け、日本では人生の逆流に耐え、困難を乗り越えて夢を実現する勇気の象徴とされています。その意味では、この活動は東日本大震災による悲惨な現実に対して立ち向かう人々の生き方とこれからの地域社会の復興と創造に活力を生み出すために大きな働きをします。
私たちは平成23年5月から国内外の多くの学校園等において「天空へ向けて舞い上げよう『鯉のぼり』活動」(第42回博報賞受賞)を推進してきています。国内では、兵庫県の加東市、姫路市と播磨町。広島県東広島市、静岡県島田市、埼玉県加須市、東京都の世田谷区と武蔵村山市、宮城県南三陸町、秋田県由利本荘市、沖縄県石垣市などの学校からの活動協力の申し出を受けました。海外からは、フランス、中国、ベトナム、ラオスの学校や人々からも支援協力を得ました。今年の活動では、「福島大学芸術による地域創造研究所」による震災復興祈念の「Koi鯉アートのぼり」プロジェクトとの協力を得て、国内外から寄贈された鯉のぼりも掲揚することになりました。海外からは、イギリス、カナダ、フランス、フィンランド、スイス、アメリカ、中国、台湾などの作品があり、この活動がグローバルな人々の絆をますます強めています。その意味では、「鯉のぼり」活動がグローバルな文化活動としての役割を担うようになってきていると意義づけられます。
このように意義づけられる「鯉のぼり」活動に関して関西学院大学においても、次のような活動を取り組んできています。平成23年3月11日の震災後、関西学院教育学部学生有志によって「応援鯉のぼり」を作成し、校舎間の通路に掲揚しました。また、西宮聖和キャンパスにおいて昨年1月7日~8日にて開催された和文化教育第8回全国大会(大会テーマ 地域社会の復興と創造をめざす和文化教育)にて「鯉のぼり」を掲揚し、学生有志による震災応援セレモニーを実施しました。この大会をきっかけに昨年4月下旬から5月上旬までの約1週間、教育学部1号館屋上に、グルーベル院長・井上学長・芝田前学部長のメッセージ揮毫の「鯉のぼり」、フランスと中国からの「応援鯉のぼり」、学部生有志による「応援鯉のぼり」を掲揚し、被災地域の復興と世界の子どもたちの幸福を祈念しました。さらに、関西学院大学の歴史を顧みますと1961年に学院創設70周年を記念して実施された「ペル-・アンデス探検」の際に、関西学院聖歌隊とその卒業生の会(唱歓会)が餞別として「鯉のぼり」を探検隊に渡したとのことです。その「鯉のぼり」は、ワスカラン登頂成功後ベースキャンプに掲揚され、チリのサンチャゴにある小学校に友好の印として寄贈されたとのことです。
このような「鯉のぼり」活動を関西学院大学の教育理念も視野にいれ、グローバルな文化活動として推進するために、本年度においては西宮聖和キャンパスだけでなく、西宮上ヶ原キャンパスにおいても「鯉のぼり」活動を下記の要領で開催いたしたく、何卒ご支援とご協力をお願いいたします。なお、この活動において掲揚した「鯉のぼり」につきましては、東日本大震災の鎮魂と復興を願って開催される「東北六魂祭」の会場(6月1日と2日に福島市にて開催)にても掲揚します。さらに、この活動の映像記録を本年度採択の大学共同研究「外国における日本の『伝統と文化』に関する教育の調査研究」として海外での日本文化の授業教材として利用することになっています。
記
1 事業名 | 関学キャンパスから舞い揚げよう空の翼!鯉のぼり |
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2 日 時 | 平成25年5月5日(日)10:00~11:30 ※ 雨天の場合、鯉のぼり掲揚のみ(10:00~16:00) |
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3 場 所 | 西宮上ヶ原キャンパス時計台前中央芝生 | ||||||||||
4 事業主旨 | これまで日本の伝統行事として子どもたちの成長を祈念するために実施されてきた「鯉のぼり」活動を、東日本大震災被災地域の復興と世界の子どもたちの幸福と世界平和を志向するグローバル文化活動として意義づけ、関西学院大学関係者、学会会員、一般参加者の願いをデザイン化して掲揚する鯉のぼり活動を実施する。 | ||||||||||
5 プログラム | 5月5日(日)
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6 参加者 | 学院の園児、児童、生徒、学生、留学生、学会会員、一般参加の子どもとその保護者、100名程度 | ||||||||||
7 主 催 | 和文化教育学会「鯉のぼり」活動実行幹事会 | ||||||||||
8 共 催 | 福島大学芸術による地域創造研究所 | ||||||||||
9 後 援 | 関西学院災害復興制度研究所 |